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空売り

空売り(からうり、英:short selling)は、現物を所有していないのに、対象物を売る行為のこと。商品先物や、為替証拠金取引でも用いられる用語だが、ここでは株式について説明する。個人投資家の多くは、証券会社から株券を借りて売るが、大口投資家同士が株券の貸借をおこない、借りた株券を売却する場合もある。株価が下落していく局面でも株取り引きで利益を得られる手法のひとつ。「信用売り」「ハタ売り」も同義語である。対義語は「空買い」。

「空売り」という言葉はネガティブなイメージを持たれる場合があるが、一定期間内には必ず買い戻しをしなくてはならないので、市場の流動性を確保するには必要な取引であり、適切に取引される限りは問題とはならない。


[編集] 空売りの流れ
空売りの流れを簡略化すると以下のようになる。

投資家は証券会社から株を借り、それを市場で100円で売る。投資家は株を売った代金100円を得る。
後日、当該株価が下がり、市場で同じ数量の株を代金で90円で買い株式を手に入れる。
この90円で買った株式を証券会社に返却する。差額の10円が投資家の手元に残り、これが投資家の利益になる。
実際には、投資家は売買に関する手数料のほか、株を借りたことによる貸株料を証券会社に支払う。証券会社ははじめの売却代金である100円を預かるので、その金利(日歩)を投資家に支払う。

空売りでは、投資家が証券会社から株を借りるので、投資家と証券会社との間に信用関係があることが条件になる。空売りのような行為は信用取引と呼ぶ。 もしも、空売りした株の値段が予想に反して上昇した場合でも、投資家は証券会社に株を返却しなくてはならないので、空売りした時よりも高い値段で株を買い戻さなくてはならない。この場合には投資家は損をすることになる。

つまり、空売りによる利益は、倒産等による株式の無価値化の場合に最大となり、その金額は空売りを行った金額そのもの(上記例では100円、実際には株価は0円にはならないのでそれ以下)に限定される。一方で株価が予想に反して上昇した場合には、その損害が天井知らずという危険性を持っている。

信用取引

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信用取引(しんようとりひき)とは株式や株式購入の資金を証券会社より借り入れて株の売買を行う投資手法のこと。現物取引と対比して使われることが多い。英読みのまま単にマージンとよぶことも多い。

株式の信用取引においては、後述する「品受」および「品渡」により決済する場合を除いて、買い付けた株式や売りつけた株式代金そのものを投資家が手にすることはなく、あくまで売買によって生じた差額のみを受け取る、または支払う。

日本の場合、利用に当っては証券会社に信用取引用の口座を開設する必要がある。損益が膨大となりやすい特徴があるので、利用に当っては取引制度を十分に理解する必要があり、口座開設に当たって証券会社の審査が実施されている。ただし、これはあくまで日本の場合であり、米国をはじめ、いくつかの諸外国の証券会社では、ミニマムデポジット(たとえば最低残高US$2,000.00やUS$3,000.00以上など)の条件さえ満たせばこのような審査がない場合が多く、証券会社により倍率は異なるが、口座開設早々から資金の2倍、3倍での取引が可能である。米国の場合、後述する「空売り」に関しては、条件すらない場合も少なくない。

委託保証金
株式や資金を借り入れて株の売買を行う際には、委託保証金と呼ばれる担保を口座に預け入れる必要があり、これにより委託保証金を超えた金額(通常は3倍前後、証券会社により異なる)での売買が可能となる。委託保証金には現金以外に株式や国債などの有価証券(代用有価証券)を充てることも認められているが、この場合は当該証券類の時価に一定の掛け率(80%前後)を乗じた換算が行われる。


[編集] 信用買い
投資家は証券会社よりその資金を借り入れて株式を買い付ける。買い付けた株式は証券会社が保管する。定められた期日内にこの株式の売り付けを行う。買い付け時と売り付け時の代金の差額を受け取る、または支払う。株式買い付け時より株価が上昇すれば上限なく利益となる。株価が下がり倒産等により無価値となった場合に損失は最大となる。信用取引で売買した株式は名義の書き換えを行うことはできず、配当金を受け取ることもできない(証券会社より「配当調整金」として配当金相当の金額を受け取る)。投資家は証券会社に対して売買の手数料のほか、借り入れた資金の金利分を支払う。「空買い」の呼称もあるが一般的ではない。


[編集] 信用売り
投資家は証券会社より株式を借り入れ、それを市場で売却する(空売りの呼称が一般的。ハタ売りとも)。売却代金は証券会社が管理する。定められた期日内に同じ銘柄の株式の買い付けを行う。売却時と買い付け時の代金の差額を受け取る、または支払う。株式売却時より株価が下がれば利益が得られ、倒産等によって株式が無価値となった際に最大となる。反対に株価が上昇した場合には損失となりその限度がない。売却と買い付けが配当権利日を跨いだ場合は配当金に相当する額を証券会社に支払わなければならない。投資家は売買の手数料のほか、株式を借りたことによる貸株料を支払う。これに加え、借り入れようとする株式が少なく、調達にコストがかかるときがあり、この場合には「逆日歩(ぎゃくひぶ)」としてさらに費用を支払う。ただし売却時の代金を証券会社に預けることになるので、これに対しては金利(日歩)を受け取ることができる。


[編集] 信用売買の決済方法
上記のように、通常の信用取引では、反対売買(買いの場合は売却、売りの場合は買い付け)により決済しその差金を遣り取りするが、それ以外に、買いの場合に借り入れた金額を現金で差し入れて当該株式を取得したり(品受、しなうけ)、売りの場合で借り入れた株式を別途現物買いし、これを差し入れ(品渡、しなわたし)るといった現物決済が行われることもある。


[編集] 信用取引銘柄
国により事情は異なるが、日本の場合、信用取引は全ての上場銘柄について可能なわけではなく、特に空売りができる銘柄はごく一部のものに限られている。また、信用取引には取引制度の違いにより、制度信用取引と一般信用取引との2種類があり、それぞれに取引可能な銘柄が定められている。


[編集] 制度信用取引
制度信用取引は、証券取引所が一定の基準で選択した銘柄のみを扱い、金利(または貸株料)や弁済期限も一律に定められている。制度信用取引は、信用取引のために株や資金の貸出しを専門に行っている証券金融会社より、証券会社が株や資金を借入れて、投資家の注文を処理する仕組みとなっている。

ただし、株の貸出しに関しては制度信用取引の銘柄全てについて行われているのではなく、基準を満たした一部の銘柄に限られている。一般に制度信用取引が可能な銘柄を制度信用銘柄、貸株が認められ空売り可能な銘柄を貸借銘柄と呼んでいる。


[編集] 一般信用取引
対する一般信用取引は、各証券会社が自己の裁量で自由に設定することが認められたもので、概して返済期限が制度信用取引のそれ(買い/売りともに6ヶ月)に比べて長め(3年、無期限など)に設定される。金利や貸株料も制度信用取引と同等か若干高めの設定となっている。対象銘柄も当該証券会社が定めたものとなるが、信用買いについては制度信用取引銘柄でない銘柄を含め全銘柄が対象となっていることが多い。一方、信用売りについては扱っていない証券会社が多く、扱っている証券会社も取扱対象は限定的な銘柄にとどまっている。


[編集] 追加保証金
一般的には、略して「追証」(おいしょう)と呼ばれる。追証とは、「委託保証金率」が「最低保証金維持率」を下回ったときに、追加保証金を入れることを言う。

委託保証金率

委託保証金率 = 実質保証金 ÷ 建代金合計 × 100
信用取引の担保 = 委託保証金現金 + 代用有価証券の評価額
実質保証金 = 信用取引の担保 - (評価損 + 決算損 + 諸経費)

[編集] 注意点
信用取引で株や資金を借りた際には、貸株料や金利が毎日発生する。また、権利確定日をまたいで売り建てている場合は配当金に相当する金額を支払わねばならない。この金額は配当落調整金と呼ばれ、買い建てている者に支払われる。 信用取引では、自己資金以上の取引が可能なため、不用意に大きな取引を行ってしまい、予測が外れて借りていた株式や株式の購入資金を、定められた日までに返済できなくなる事態に陥ることもある。


ただし、これは信用取引制度の理解が不十分で、資金管理に失敗したために生じる問題であり、信用取引自体が危険な訳ではない。信用取引には危険なイメージが多いが、株価下落時のリスクヘッジは、現状では信用取引に頼る以外になく、適切に利用する限り投資家にとって有用な制度である。

過去には、信用取引の危険を過大に評価して、利用に大きな制約を課してきたが、近年になり委託保証金の最低額を少なくしたり、審査の簡易化などが行われ利用者が増加傾向にある。なお、このような傾向は投資家の利便性を高めることに繋がっているが、必ずしも投資家本位の改革ではなく、証券会社の収益源確保の必要性から進められている側面がある。